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Blues Allnight / THE JAMES BLOOD ULMER BLUES EXPERIENCE

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ギター・サウンドが全く違う。使っているギターが違うからか。ジャケットはスタインバーガーを持っている写真だ。ジェイムズ・ブラッド・ウルマーもこんなギターを弾くことができたのだ、と変に感心してしまう。それほど、このアルバムでのジェイムズ・ブラッド・ウルマーは違う。それもそのはず、このアルバムにはロニー・ドレイトンというもうひとりのギタリストが入っている。もちろんジェイムズ・ブラッド・ウルマーもギターを弾いているが、そのスタイルはロニー・ドレイトンにあわせているようだ。そしてジェイムズ・ブラッド・ウルマーはボーカルに力点を置いている。

ロニー・ドレイトンはデファンクトにいたこともあり、ジャマラディーン・タクマのソロアルバム「ジュークボックス」にも参加したことのあるギタリストだ。ミシェル・ンデゲオチェロの「ビター」にも参加していた。ジェイムズ・ブラッド・ウルマーとは異なり、カラッと乾いた行儀のよいギターを聴かせてくれる。このダブル・ギターを支えるリズムセクションは、ベースが旧友アミン・アリ、ドラムはラウンジ・リザーズに在籍し、オーネット・コールマンの「イン・オール・ランゲージ」にも参加したグラント・カルビン・ウェストンだ。

ロニー・ドレイトンのギターも悪くないし、ソロ・パートではいかにもジェイムズ・ブラッド・ウルマーらしいフレージングを聴かせてくれるところもある。しかしこのアルバムでは、ジェイムズ・ブラッド・ウルマーの歌を楽しむのがいいだろう。枯れた声はなかなかのものである。緊張感ではなくゆったり感を楽しむ、すなわち文字どおり「ブルース・エクスペリエンス」である。

録音は1989年で、西ドイツのCalren Studiosで行われた。このアルバムは1990年にIN & OUT RECORDSから発売された西ドイツ盤だ。(20070607/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)
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In the Name of ... / MUSIC REVELATION ENSEMBLE

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1980年代の熱いギター・プレイがよみがえった。いや、もっと研ぎ澄まされた緊張感あふれる演奏に進化している。ソロアルバム「オデッセイ」に代表されるように、ジェイムズ・ブラッド・ウルマーのギターは悟りをひらいたかのような安定した優雅なものであった時期があったが、ここでは鬼気迫る演奏に戻っている。ギタースタイル、そしてサウンドから気がつくのは、ノイズを意識的に演奏に取り入れていることである。これはフレッド・フリスやアート・リンゼイにも似ている。アナーキーな感覚が強く感じられる演奏になっているのだ。

ベーシストに旧友アミン・アリを迎えたこともあるのだろうか。またドラムはコーネル・ロチェスターであり相手に不足はない。このトリオに加えて、ゲストとしてアルトサックスでArthur Blythe(トラック2,6,7)、ソプラノサックスとテナーサックス、フルートでSam Rivers(トラック1,5,4)、バリトンサックスでHamiet Bluiett(トラック3)が参加している。

もともとジェイムズ・ブラッド・ウルマーのギターは万人に好まれるものではない。ギターを少しかじった者が聴いたなら、もしかしたら下手糞だと思ってしまうかもしれない。ミスピッキングと思われる多数の音、コード進行を知らないかのようなでたらめなフレージング、不協和音。しかし一度好きになってしまえば虜になる。唯一無比の魅力がある。

ジェイムズ・ブラッド・ウルマーのギターはエロティックだ。全く正反対のギタースタイルはパット・メセニーである。パット・メセニーのギターは中性的で、色でいえばパステルカラーだ。それに比べてジェイムズ・ブラッド・ウルマーのギターからは、汗の匂いがする。色でいえば赤と黒の斑模様だろうか。

1曲目の「イン・タイム」は、ハーモロディック風の曲だ。音の隙間がありながら、緊張感にあふれている。2曲目「ノンビリーバー」もハーモロディック的である。このアルバムの中では優雅な方になるだろう。3曲目では疾走感のある怒涛の演奏を聴かせてくれる。ドラムのコーネル・ロチェスターの迫力によるところが大きいが、ベースのアミン・アリも絶妙のインタープレイで応えている。そして4曲目。この「マンカインド」の冒頭におけるジェイムズ・ブラッド・ウルマーのソロプレイは素晴らしい。ギターの弦に触れ、つまびく指先が見えるようだ。

5曲目「ヘルプ」はモダン・ジャズ的なアプローチで、アミン・アリのベースが饒舌に歌っている。6曲目「アバンダンス」はオーネット・コールマン的だ。冒頭のテーマは、とてもユーモアがある。7曲目「ピュリティ」はビートの変化が面白い。

録音は1993年の12月6日と7日、ニューヨークのEastside Soundスタジオで行われた。このCDは1994年にディスク・ユニオンから発売された日本盤だ。(20070606/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)

Music Revelation Ensemble / MUSIC REVELATION ENSEMBLE

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デイヴィッド・マレイ、ジャマラディーン・タクーマ、ロナルド・シャノン・ジャクソン、そしてジェイムズ・ブラッド・ウルマー。この4人の名前を聞けば胸の高鳴りを抑えきれないはずだ。

このグループのリーダーは、間違いなくジェイムズ・ブラッド・ウルマーだといえる。それは1曲目の「ボディ・トーク」を聴けばわかる。まさにジェイムズ・ブラッド・ウルマーの世界がここにある。だがジェイムズ・ブラッド・ウルマーはただひとつの世界に留まっている訳ではない。聴きようによってはたいへん耳障りな、ノイズの塊のようなギタープレイ。ただ一瞬の空白も恐れるかのように執拗にかきならすギタースタイルは独特のものだが、ここでのジェイムズ・ブラッド・ウルマーの音はたいへん整理されている。予想外に隙間がある。しかし、音が少ないにもかかわらず、グルーヴ感は何倍にも増している。まさに神がかった境地に達しているのだ。

2曲目の「プレイタイム」では、このカルテットがオーネット・コールマンの音楽の正統な継承者であることを証明している。おもわず小躍りしてしまいそうなメロディーが随所にあらわれ、メンバーは各自まちまちに好き勝手をしていながら、それでいてある一つの一体感をもっている。ここではジェイムズ・ブラッド・ウルマーのギターもいいが、デイヴィッド・マレイのサックスがとてもいい味を出している。まるでオーネット・コールマンの生まれ変わりのようだ。

3曲目「ニサ」では、ジェイムズ・ブラッド・ウルマーのもうひとつの顔、ドローンを活かしてゆったりとした空間を聴かせてくれる。4曲目「ストリート・ブライド」は細かなリズムの切り方から、ロナルド・シャノン・ジャクソンの色が感じられる。デコーディング・ソサエティーでやってもおかしくない曲だ。5曲目「ブルース・フォー・ディヴィッド」はデイヴィッド・マレイの作曲だろうか。ここではオーネット・コールマンを意識したものではなく、比較的オーソドックスなサックスプレイをしてくれる。6曲目「バーン!」は典型的なフリー・ジャズスタイルに近い。

録音は1988年2月3日と4日。ニューヨークのA & R Recordingスタジオで録音された。このアルバムは1988年に発表された。ディスク・ユニオンから発売された日本盤だ。解説を中村とうよう氏が書いている。(20070605/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)

<事務連絡>NT-Committee2

TechEdで配布したいカードの原稿です。nt-com2-card.jpg

Egg Featuring Dave Stewart / EGG

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Wikipediaを見ると、「EGG」と名のつくグループは5つもある。カナダのエレクトロニック・デュオの「EGG」、アメリカのインディ・ポップ・バンド「EGGS」、ブリティッシュ・エレクトロニック・ファンク・バンド「THE EGG」、アシッド・ハウス・ミュージシャンの「Mr Egg」、そしてこのカンタベリー派と呼ばれるプログレッシブ・ロック・バンドの「EGG」だ。

「エッグ」は1968年の7月に結成した。メンバーはオルガン・プレイヤーのデイブ・ステュワート、ベーシストでありボーカルをとるモント・キャンベル、そしてドラムのクライブ・ブルックスの3人である。この3人はエッグを構成する前に、ギタリストのスティーブ・ヒレッジを加えた4人で「ユリエル」というグループをやっていた。この「ユリエル」というグループのことは、セカンドアルバム「優雅な軍隊」にある曲「A Visit To Newport Hospital」で歌われている。

このCDは、エッグのファーストアルバムのリイシューで、オリジナルのファーストアルバムに「Seven Is A Jolly Good Time」と「You Are All Princes」の2曲が加えられている。なおオリジナルの「Symphony No.2」は「Movement 1」、「Movement 2」、「Blane」そして「Movement 4」という4部構成になっているが、「Movement 3」という部分もあったのだが著作権の関係で収録できなかったらしい。2005年に発売されたリイシュー盤では、この「Movement 3」も収録されており、そのためにオリジナルの「Symphony No.2」は20分40秒であったのに比べて、リイシュー盤では23分58秒の長さになったらしい。だがこのCDにおける「Symphony No.2」は20分43秒であるので、オリジナルバージョンのようだ。

エッグの魅力は、まずデイブ・ステュワートのオルガンだ。そしてモント・キャンベルの歌もいい。ボーカリストとして秀でているとは言えないが、気だるい歌い方は独特の雰囲気があり、デイブ・ステュワートのオルガンにぴったりだ。エッグの最高作品はセカンドアルバムの「優雅な軍隊」だと思うが、このファーストアルバムも多彩な曲があって、なかなか、いい。

このアルバムはもともと1970年に発表された。このCDは1992年にDERAMから発売された英盤だ。(20070601/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)

Cornflakes and Crazyform / EPISODE SIX

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エピソード・シックスは、後にディープ・パープルで活躍するイアン・ギランとロジャー・グローバーが参加していたことで有名だ。エピソード・シックスが結成されたのは1964年の7月だが、イアン・ギランが参加したのは1965年の5月だ。その時点のメンバーは、ボーカルがイアン・ギラン、ギターがグラハム・ディモックとトニー・ランダー、キーボードがシェイラ・ディモック、ベースがロジャー・グローバー、ドラムがハーベイ・シールドの6人だ。1966年と1977年にパイ・レコードからいくつかのシングルレコードを発表したが、イアン・ギランとロジャー・グローバーがディープ・パープルに参加するためにバンドを去ってからは活動が停滞した。しかし1974年までは続き、その後に参加したメンバーの中には、後にロキシー・ミュージックヤイアン・ギラン・バンドに参加することになるベーシストのジョン・ガスタフスンや、クオーターマス、ギランに参加するドラムのミック・アンダーウッドがいた。

アルバムは発表していないようで、ここに集められた曲は、シングル曲やデモ録音、リハーサルなどである。CD1が「The Story So Far...」と名付けられ、シングルとして発表された曲が25曲収められている。CD2は「Bonus Tracks」となっており、デモ曲やリハーサルが6曲、未発表シングル曲が3曲、シーラ・カーター・アンド・エピソード・シックス名義の曲が4曲、ライブ・イン・ヨーロッパの録音が2曲、初期の作曲が2曲、カバー曲が9曲の合計26曲が収められている。これと似たような編集で「Love, Hate, Revenge」があるが、こちらのほうがお買い得感がある。曲数も多いし、何よりも23ページにわたるカラーのブックレットがよい。様々なデータもわかるし、当時のバンドを知るための写真も豊富にある。ファンとしては嬉しい限りだ。

流行りのグループサウンズを真似た個性の薄い曲もあるが、ボーカリストとしてのイアン・ギランの個性を発揮させた曲もある。CD1では6曲目の「スタガー・リー」や8曲目の「キュー・セラ」、9曲目の「リトル・ワン」、そして14曲目の「ミスター・ユニバース」などだ。11曲目の「サンシャイン・スーパーマン」はドノバンの名曲だが、この曲もイアン・ギランらしさに味付けられている。20曲目の「ストーンズ・メドレー」も面白い。名曲「サティスファクション」で始まるカバー曲だ。また3曲目の「ラブ・ヘイト・リベンジ」や22曲目の「アイ・アム・ザ・ボス」など、ソフトであるが印象に残る名曲も多い。イアン・ギランが後にアルバムにまとめる「シャーカズー・アンド・アザー・ストーリーズ」につながる曲だ。

このCDは2002年にPurple Recordsから発売された。英盤だ。(20070531/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)

Love, Hate, Revenge / EPISODE SIX

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この音楽をどうジャンルづけようかと迷ったが、「グループサウンズ」とすることにした。ディープ・パープルのイアン・ギランとロジャー・グローバーが在籍した伝説のバンドであり、とりわけイアン・ギランというボーカリストを語る上で、とりわけ重要なものである。いったいどんな音楽を聴かせてくれるのだろう、と期待させてくれるのだが、ディープ・パープルやソロ活動を念頭において聴くと拍子抜けするだろう。だがここにはイアン・ギランという個性的なボーカリストがロックの道へ足を踏み出した歴史の一歩がある。

CD1は「The singles, As & Bs」と題されており、シングル曲が収録されている。ふにゃふにゃした甘い曲が続き、典型的な60年代グループ・サウンズ的な曲が続く。ビートルズのカバー曲さえある。しかしバンドのサウンドが徐々にオリジナリティーを確立していく過程がよくわかる。たとえばイアン・ギランとロジャー・グローバーが参加する前のディープ・パープルは、後のキー・パーソンである彼らがいないにもかかわらず斬新だった。このCDからは、グループ発足時には流行のサウンドをなぞった曲作りがされていたが、次第にビートが強くなり、17曲目の「モーツァルト・バーサス・ザ・レスト」のようなクラシックの手法をロックに適用した曲など、次第に初期のディープ・パープルの表現方法に接近していく様子が感じられる。

イアン・ギランのボーカルについては、途中13曲目の「リトル・ワン」あたりから、明らかにスタイルが変わってくる。曲もイアン・ギランのボーカルを中心にすえた作りになってくる。特筆すべきは16曲目の「ミスター・ユニバース」で、ここでイアン・ギランのシャウト&スクリームスタイルの原型が確立されている。なおこの曲は「イアン・ギラン・バンド」の同名の曲とは全く違うのだが、イアン・ギランにとってターニング・ポイントとなった曲であることは間違いない。

19曲目「アイ・ウィル・ウォーム・ユア・ハート」と20曲目「インセンス」では女性ボーカルが聴ける。シーラ・カーターという女性ボーカリストだ。21曲目「アイ・ウォント・ハート・ユー」と22曲目「UFO」ネオ・マヤという人物の作品になっているが、バンドのイメージを一新する曲だ。特に「UFO」はサイケデリックな曲、というかサウンド・イメージといったようなもので、バンドの方向性を模索している様子がうかがえる。

CD2は「Rarities, Demos, and Live Recordings」となっており、トラック1から6が別バージョンとアウトテイク、トラック7から13がデモ録音、残るトラック14から22がライブ録音だ。ライブ録音ではトラック14が「モーツァルト・バーサス・ザ・レスト」で、こなれていないがインパクトのある早弾きのギターが聴ける。その他のトラックでは、イアン・ギランのスクリームがあり、ライブではボーカルスタイルが固まりつつあったのだと思える。

このCDは2枚組で、2005年にCastle Musicから発売された英盤だ。(20070530/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)

Talisman: in the Studio & on Stage / GILLAN

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このCDに限らずイアン・ギラン関連のコンピレーションアルバムには首を傾けたくなるものもある。「評価」という言葉を使うのは大袈裟だが、いったいどのような経緯でこのようなアルバムが発売されるに至ったのか、疑問に思う。しかしこのCDには、他のCDに見られないトラックがある。

2枚のCDが入っているが、1枚は「イン・ザ・スタジオ」と名付けられたスタジオアルバムからの寄せ集めである。「シャカズー」や「ホグワッシュ」など比較的ポップな1990年代の曲が続いた後、イアン・ギラン・バンドの初期の曲「クリアー・エアー・タービュランス」や「グッドハンド・ライザ」、「スキャラバス」などが続く。そしてアルバム「ネイキッド・サンダー」と「ツールボックス」の収録曲が続く。

面白いのは2枚目のCD、「オン・ステージ」で、ライブ録音が収められているものだ。特に3曲目「メッセージ・イン・ア・ボトル」と「ファイティング・マン」の2曲は、もともと日本のみで発売されたアルバム「ギラン」からの曲で、ライブ録音は珍しい。恐らく演奏メンバーも当時のもののように思える。ドラムのリーム・グノッキーはたいへんパワフルなドラミングを聴かせてくれるプレイヤーで、この録音でもすさまじいリズムが洪水のように流れてくる。残念なのは録音状態がいまひとつ良くないことと、アルバムの演奏を忠実に再現しており、バンドとしての遊びが少ないことだ。バンドが自身の曲を何度もステージで演奏すると、次第にバンドらしさがアレンジにでてきて、アルバム録音から逸脱してくるのだが、この演奏からは、まだそこまでバンドとしての成熟がみられない。通称「ジャパニーズ・アルバム」とも呼ばれるアルバム「ギラン」は大好きなだけに、もっと演奏が発掘されることを願っている。

それ以外に興味深いのは、CD2の9曲目「ブラック・ナイト」である。ディープ・パープルの有名な曲であるが、こなれた演奏で良い味を出している。また12曲目に「スモーク・オン・ザ・ウォーター」が演奏される。また13曲目の「ニュー・オーリンズ」もカバー曲で、最後の14曲目「ヘルター・スケルター」はビートルズの曲である。

いろんな意味でバラエティに富んだコンピレーションアルバムである。このCDは2004年にDemon Music Groupから発売されたEU盤だ。(20070529/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)

Things to Come , PSI-FI / SEVENTH WAVE

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セブンス・ウェイブの「サイ・ファイ」は学生時代にプログレ雑誌で紹介されており、ジャケットデザインの大胆不敵さもあって、いつか必ず聴きたいアルバムのひとつだった。今のようにWebで簡単に輸入CDを注文できるという時代ではなかったので、音楽雑誌の新譜情報をチェックしたり、輸入レコード店へ行けば棚の端から端まで見て回るということをした。たいへんな苦労でもあるが、楽しい時間でもあった。人間は好きなことのためには時間も苦労も厭わない。

しばらくして輸入レコード店の片隅でアルバム「シングズ・トゥ・カム」を見つけた。「サイ・ファイ」のジャケットに比べて地味な感じは否めず、これが本当に同じバンドのアルバムかどうかと疑いながら手にとってレジへ向かったことを思い出す。そして聴いた後も、しっくりこなかった。それは当時の俺がプログレッシブ・ロックというもののとらえ方が一面的であったためだ。

キング・クリムゾンやイエス、ELPといったバンドをプログレッシブ・ロックとして聴いていた。その感覚からすれば、セブンス・ウェイブを聴いても、確かにピンとこないはずだ。プログレッシブ・ロックという分類そのものに意味がない、と言ってもいい。もっと細かなジャンル分けが必要なのだ。

セブンス・ウェイブはグループの名前だが、実質的にはケン・エリオットトキーラン・オコナーの2人のプロジェクトである。ケン・エリオットはキーボードやシンセサイザーを弾き、キーラン・オコナーはパーカッションを叩く。しかしどちらもマルチ・プレイヤーであり、ボーカルも担当する。

実際のところ「エレクトリック・ポップ」という言葉がセブンス・ウェイブの音楽を良くあらわしていると思われる。キーボード中心の軽いサウンド作りがそう思わせるのだが、リズムはシーケンサーではなくドラムキットやパーカッションであり、しかもかなり熱いドラム・プレイをしてくれる。音が軽いのでポップな印象を受けるが、変拍子が随所に組み込まれており曲の構成はかなり複雑である。トータルアルバムとしての作りも意識されている。

このCDは「シングズ・トゥ・カム」と「サイ・ファイ」という2枚のアルバムを集めたもので、トラック1から14までが「シングズ・トゥ・カム」、トラック15から24が「サイ・ファイ」である。「シングズ・トゥ・カム」は1974年、「サイ・ファイ」は1975年のアルバムだが、アルバムの作りとして「シングズ・トゥ・カム」の方が複雑さを感じ、「サイ・ファイ」の方がダイレクトにロック的な印象を受ける。ボーカルがピーター・ガブリエルを連想させるようなところや音楽に演劇性が感じられるところもあって、ジェネシスとの類似性も感じられる。ロック・オペラ的なところはネクターにも近い。

このCDは1999年にGull Recordsから発売された英盤であるが、MSIが輸入して解説と英詞をつけて日本盤として発売したものだ。解説はたかみひろし氏が書いている。たかみひろし氏は日本にユーロピアン・ロックを広めたことで有名だが、その頃は自分の名前をひらがなで記していた。このCDの解説では高見博史と漢字で記している。(20070528/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)

For the Roses / Joni Mitchell

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このアルバムは、名作「ブルー」と、ジャズの要素を大胆に取り入れてジョニ・ミッチェルの名を知らしめた有名なアルバム「コート・アンド・スパーク」の間にはさまれたアルバムだ。邦題は「バラにおくる」とされる。

一曲目の「宴」を聴いてわかるとおり、前作「ブルー」を引き継いだような作りになっている。ただしここで歌われるものは、「ブルー」のように男女の愛をテーマにしたものではなく、また男女の愛と女性の生き方についてではなく、もっと広く人の生き方といったようなものを取り上げている。その意味では「ブルー」のような突き刺さる痛々しさが感じられないだけインパクトが薄いといえる。

サウンド的に感じられるのは、たとえば「パラングリル」における冒頭からのフルートの使い方や「レット・ザ・ウィンド・キャリー・ミー」でのサックスなどの管楽器、「恋するラジオ」のハーモニカ、など、ゲストプレイヤーを使った表現の幅が広がっている。リズムについても曲によってパーカッションが使われたり、「ブロンド・イン・ザ・ブリーチャーズ」ではドラムキットが登場する。ハーモニカで参加しているのは「クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング」のグラハム・ナッシュだ。

といったようにサウンド面での拡張がされていることと同時に、ジョニ・ミッチェルの歌にも表現の広がりと深まりがみられる。特に俺のお気に入りは「コールド・ブルー・スティール」だ。実に透明感のある歌い方で、あまりに真剣に聴き込むと、永遠の深みに引きずられそうになる。ブルースである。ジョニ・ミッチェルの解釈したブルースの形があらわれている曲だ。

2枚の名作アルバムに挟まれて、どちらかといえば知名度の低いアルバムかもしれない。しかし「ブルー」ほどの刺々しさがないところが、逆にいえばいつまでも飽きることなく、やや軽い気分で聴くことのできるアルバムだ。

このアルバムは1972年に発表された。このCDはWEA International Inc.から発売された日本盤だ。(20070525/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)

Anthology / GILLAN

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ファンならばこのようなCDを見ると、いったいどんな録音が収められているのだろう、と気になってしかたがないはずだ。2枚組で、CD1は12曲で56分23秒、CD2は12曲で51分01秒もある。合計すると2時間に近い。

収められたものは、あるものはデモトラックらしきもの、またあるものは別テイクらしきもの、そしてライブ録音、アリーナ級の会場から中規模のホールらしきものまで、カセットテープで撮ったようなクオリティの低いものから、正式なライブ録音としても通用しそうなもの、そして遊びで録音したようなもの。とにかくごった煮状態で収められている。

メンバーはベースとギターがジョン・マッコイ、ギターがバーニー・トーメ、キーボードとフルート、バッキングボーカルとしてコリン・タウンズ、ドラムとパーカッションがミック・アンダーウッド、そしてボーカルがイアン・ギランだ。アルバム「ミスター・ユニバース」、「グローリー・ロード」、「フューチャー・ショック」、そして「ダブル・トラブル」からの曲が中心だ。

もちろんオフィシャルアルバムの曲を聴くのが正しい鑑賞態度ではあるが、ファンとしてはこのようなCDも聴かずにはいられない。このCDは2003年にAngel Airから発売された、ドイツ盤だ。(20070518/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)

The Solid Gold Collection / Ian Gillan

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イアン・ギラン・バンドの魅力は、レイ・フェンウィックのギターとジョン・ガスタフスンのベース、マーク・ナウシーフのドラムによる、そのジャズ・ロック的なアプローチだ。そしてコリン・タウンズのキーボードを加えて「プログレッシブ・ロック」としての評価も得ている。しかしイアン・ギランのボーカルはプログレ的ではなく、その対比が面白いという人もいる。

しかしイアン・ギランのボーカルは、ある意味で革命的であり、挑戦的だ。ボーカルを叫び声で表現するのは、例えばオノ・ヨーコが「fly」でみせたような「うぇぇえぇぇ」というものと似ているともいえる。その意味では、イアン・ギランのボーカルそのものが「プログレッシブ」であるといえよう。

このCDは、イアン・ギランのソロの足跡を概観するのにうってつけだ。1枚目のCD1曲目から4曲目はアルバム「Cherkazoo And Other Stories」から、5曲目から7曲目はセカンドアルバムの「クリアー・エアー・タービュランス」から、8曲目から14曲目はサードアルバム「スカラバス」から。2枚目のCD1曲目から5曲目までは「アクシデンタリー・オン・パワポーズ」、6曲目から11曲目まではアルバム「ネイキッド・サンダー」、12曲目から16曲目まではアルバム「ツールボックス」からの選曲である。

録音は元のオフィシャルアルバムどおりのもので、このCDを聴いても驚きはないが、このCDを使ってイアン・ギラン・バンドを手軽に聴くというのもありなのだろう。2005年にUnion Square Ltd.から発売されたものだ。(20070517/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)

Rarities 1975 - 1977 / IAN GILLAN BAND

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ファンにとってはお蔵入りのはずであった録音が手に入ることは嬉しいことであるが、当事者にとってはどうなのだろう、と心配してしまう。おそらくレイ・フェンウィックのインタビューから組み立てたと思われる8ページにわたる解説には、イアン・ギラン・バンドに関する裏話がいろいろと書かれている。

このCDに収められたトラックは、あるものはオフィシャルアルバムに収録された曲のデモバージョンであり、またあるものは幻の4thアルバムとして録音された未発表曲であり、またあるものはオフィシャルアルバムのトラックからボーカルを抜いた「バッキング・トラック」であり、あるいはライブ録音であったりする。いずれも「お蔵入り」の運命にあった録音だ。

オフィシャルアルバムのバッキング・トラックはもちろんのこと、デモバージョンであれ未発表曲であれ、録音状態はすこぶるいい。さらに未発表曲にはジョン・ガスタフスンがボーカルをとった曲があったり、ロジャー・グローバーがベースを弾いた曲があったりする。

レイ・フェンウィック、ジョン・ガスタフスン、マーク・ナウシーフ、コリン・タウンズ、そしてイアン・ギラン。第一期といえる黄金期のイアン・ギラン・バンドの魅力を再確認するCDだ。ライブ録音の「スモーク・オン・ザ・ウォーター」は東京公演のようだ。曲の終りに「トーキョー、ユー・ハブ・ビーン・ファンタスティック!」とイアン・ギランが応えている。

このCDは2003年にAngel Air Recordsから発売された。パッケージには英盤と書いてあるが、CDにはオーストラリア盤と書かれている。(20070516/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)

Live at the Rainbow / IAN GILLAN BAND

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1977年5月14日に行われたイアン・ギラン・バンドのロンドン、レインボー・シアターでのライブを収録したものである。レインボー・シアターでの収録曲は「クリアー・エアー・タービュランス」、「マネー・レンダー」、「チャイルド・イン・タイム」、「スモーク・オン・ザ・ウォーター」、「ウーマン・フロム・トーキョー」の5曲で、もう一曲、6曲目の「ツイン・エクゾーステッド」は録音の詳細がわからない。CDには「ツイン・エクゾーステッドはもっと後の録音だが、レインボー・シアターでの録音と似ているので、このCDに収録することを決めた」といったことが書いてある。

イアン・ギラン・バンドはファーストアルバム「チャイルド・イン・タイム」を1976年7月に発表し、1977年4月にはセカンドアルバム「クリアー・エアー・タービュランス」を発表したところであった。ファーストアルバムからの「チャイルド・イン・タイム」はディープ・パープルのものと異なり、イアン・ギラン・バンドとしての演奏が確立したものだ。それに対してセカンドアルバムからの「クリアー・エアー・タービュランス」と「マネー・レンダー」は、アルバム発表直後ということもあり、またもともと完成された様式美を持っていることもあり、アルバムに忠実な演奏になっている。

「スモーク・オン・ザ・ウォーター」と「ウーマン・フロム・トーキョー」の2曲はディープ・パープルの曲だが、いずれもこのバンドで演奏を繰り返してきたためか、自分たちのバンドの曲に完全に消化しており、とてもヘビーな仕上がりになっている。観客の歓声からも、その演奏の素晴らしさがわかる。「ツイン・エクゾーステッド」も最高だ。

録音は悪くない。ライブ会場にマイクをそれなりにちゃんと立てて録音したもののようだ。ライブ感が十分に味わえる。全部で6曲、時間にして36分43秒の短いアルバムだが、当時のイアン・ギラン・バンドの勢いを感じられる録音だ。レイ・フェンウィック、ジョン・ガスタフソン、マーク・ナウシーフ、コリン・タウンズ、そしてイアン・ギランのこのメンバーが大好きなファンとしてはとても嬉しい。(20070515/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)

Love, Billy / DISCOUNT

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ディスカウントのオリジナルメンバーは、ベースがJames Parker、ボーカルがAlison Mosshart、ドラムとボーカルがBill Nesper、ギターとボーカルがRyan Seagristで、1996年にファーストアルバム「Ataxia's Alright Tonight」を発表した。その後同じメンバーでセカンドアルバム「ハーフ・フリクション」を1997年に発表した後、このミニアルバムを発表した。

収められた曲は、いずれも3分前後のものが5曲。これらの曲は、英国人ミュージシャンBilly Braggの曲をカバーしたものらしい。トータル時間は15分15秒と短いが、演奏はディスカウントの魅力をよく表している。つんのめる前倒しのリズム、ごりごりと力強いベース、ざくざくとリフを刻むギター。そして幼さを感じさせるキュートなボーカル。

セカンドアルバムと比べても、このミニアルバムの曲は初心に帰ったかのような印象がある。生き生きとしたバンドらしさが感じられるのだ。たとえば3曲目「A Pict Song」のはじめにはカリッというギターかベースのシールドノイズ音があったり、4曲目「Help Save The Youth Of America」の冒頭にある笑いながらのカウントアップなど、よい意味できちんと整理されていない編集にあらわれている。

そして最も素晴らしいのは、1曲目「Accident Waiting To Happen」のアリソンのボーカルである。全くエフェクトをかけていない生々しい声。リバーブさえかけていない。息継ぎの音も聞こえてくる。まるで目の前で歌っているかのようだ。素晴らしい録音だ。またこのトラックで、アリソンのボーカリストとしての魅力と実力をあらためて感じさせてくれる。

ディスカウントはベースをTodd Rockhillに交代してサードアルバム「クラッシュ・ダイアグノスティック」を2000年に発表するのだが、カバー曲ではあるが、俺はむしろこのミニアルバムの方を評価したい。ディスカウントを少しでも評価しており、まだこのミニアルバムを聴いていないなら、ぜひ聴くべきだ。

このアルバムは1998年の2月にMorrisound Studiosで録音され、同年にFueled By Ramenから発売された。(20070514/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)

Blue / Joni Mitchell

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オープニングの「オール・アイ・ウォント」とエンディングの「リチャードに最後に会った時」は、このアルバムを聴いた後でとりわけ印象に残る曲だ。この2曲が対になり、ひとりの女性の愛と人生の歩みがみごとに描かれている。この2曲の対比によって、このアルバムが名作とされると言っても過言ではない。

「オール・アイ・ウォント」は自由で強い女へのあこがれと、素朴な愛の賛歌だ。自分の気持ちに素直であるということ、自由であること、そして愛することで互いに高めあうことができる。いわばユートピア的な愛の形が理想として歌われる。しかし「リチャードに最後に会ったとき」では、幸せとは何だろうという問いに気付きながら、もはや幻想となってしまった愛に焦がれ、薄暗いカフェで過ごすしかない悲しみが歌われる。弱々しく虚勢をはりながら。悲痛である。

ジョニ・ミッチェルがこの歌を歌ったのは1971年。もはやこのとき彼女は、底の浅い新しい愛の形に対して懐疑をおぼえ、警鐘を鳴らしていたのだ。20台の後半を迎え、数々の恋愛を経験しながらたどりついたひとつの結論がここにある。それは悲しく切実で、逃げることのできない冷酷な現実だ。

サウンド面では前作に比べてむしろシンプルになっている。アコースティック・ギターの曲は、2本のギターを効果的に伴奏に使っているが、ギターの曲はギターだけ、ピアノ伴奏の曲はピアノだけとシンプルだ。またジョニ・ミッチェルのボーカルも、ほとんどエフェクトをかけない肉声で録られ、コーラスなどのオーバーダビングもされていない。

このアルバムは1971年に発表された。このCDはワーナー・ミュージック・ジャパンから「フォーエバー・ミュージック」シリーズとして発売された日本盤だ。(20070511/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)

Ladies of the Canyon / Joni Mitchell

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ジョニ・ミッチェルは1943年、カナダのアルバータ州フォート・マクリードという町で生まれた。母は教師、父はカナダ空軍のパイロットだった。そのため戦中は両親とともにいくつもの基地を転々としたという。戦後には父が食料品店をすることになって、11歳のときにはサスカチェワン州最大の都市であるサスカトゥーン市に落ち着いた。ジョニ・ミッチェルはこのサスカトゥーンを自らのホームタウンであると思っているようだ。

7歳のときからピアノのレッスンを受けた。そして作曲することに天性の素質を見出した。また学校では美術にも才能をみせた。そして英語の先生からは「あなたは筆で絵を描くように、言葉を綴ることができる」と言われたらしい。

このアルバムは、名作「ブルー」に先立つサードアルバムだが、音楽的なスタイルはこのアルバムで既に完成していると言っていい。2本のギターを使った伴奏にのせ、写実的に、夢見るように歌う。「ブルー」の刺すような緊張感はないが、それだけに味わい深い。

有名な「サークル・ゲーム」の歌詞は素晴らしい。またクロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングが歌って有名になった「ウッド・ストック」もいい。しかしアルバムのオープニングにふさわしい「モーニング・モーガンタウン」、リズム感のある「会話」、タイトル曲の「レディズ・オブ・ザ・キャニオン」、ロック的なリズムの「ビッグ・イエロー・タクシー」などジョニ・ミッチェルらしさの感じられる曲がたくさんある。

ジョニ・ミッチェルのことを「女のボブ・ディラン」と言われることがあるらしい。そのように思ったことはほとんどなかったのだが、このアルバムの「プリースト」を聴くと、ジョニ・ミッチェルにもボブ・ディランの影響があるのではないか、と感じるところもある。

「フォー・フリー」や「アレンジメント」のように、成功しスターダムにのしあがった自らの姿に戸惑っていることも素直に歌になっている。「フォー・フリー」はストリートのクラリネット・プレイヤーを歌ったもので、この曲を聴いて、クラリネットが吹きたくなった。

このアルバムは1970年に発表された。このCDはワーナー・ミュージック・ジャパンから「フォーエバー・ミュージック」シリーズとして発売された日本盤だ。(20070510/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)

Clouds / Joni Mitchell

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名作「ブルー」からジョニ・ミッチェルの世界に足を踏み入れた俺にとっては、どうしても「ブルー」との対比で他のアルバムをみてしまうところがある。「ブルー」はジョニ・ミッチェルにとって4枚目のアルバムであり、このアルバムは名作「ブルー」の前々作、ジョニ・ミッチェルのセカンドアルバムである。サウンド面でいえば、「ブルー」がアコースティックギターを伴奏にした曲とピアノを伴奏にした曲を織り交ぜてバリエーションを出していたのに対して、このアルバムではアコースティックだけのシンプルなものである。またそのギターも、ブルーでは2本のギターを複雑にからませたものであるのに対して、このアルバムではどちらかといえばトラッドでシンプルな伴奏といえる。

歌詞については「私は判っている」と邦題のついた「I Think I Understand」と「年老いていく子供たちへ」とされる「Songs To Aging Children Come」以外は基本的に愛の歌である。ここで歌われる愛は、基本的にはそれぞれに完結した愛の物語であり、「ブルー」で歌われるように人生そのものをテーマにし、愛と格闘し、矢尽き刀折れる、といった激しいものではない。

ジョニ・ミッチェルの歌は、聴きやすいと言えるかもしれない。「ブルー」は何かをしながら聴く、ということができないアルバムだ。たとえBGMとして流していても、必ず心を奪われるとげとげしい存在感があるが、このアルバムは比較的素直に「歌」を楽しめるものであるといえる。

発展途上である、という印象のアルバムだが、これはこれで、いい。このアルバムは1969年に発表された。このCDはワーナー・ミュージック・ジャパンから「フォーエバー・ミュージック」と題されたシリーズの一枚で日本盤だ。歌詞と対訳があるのがありがたい。(20070509/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)

Crash Diagnostic / DISCOUNT

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1997年に衝撃的なファーストアルバム「Ataxia's Alright Tonight」を発表したディスカウントのサードアルバムである。ファーストアルバムにおける天衣無縫な荒々しさはディスカウントの大きな魅力だった。そしてバンドのメンバーが生き生きと演奏し、ライブの中から練り上げられた曲は魅力的だった。セカンドアルバム「Half Fiction」では落ち着いた演奏をみせてくれたが、ファーストアルバムで感じた魅力は残念ながら半減していた。

ロックバンドというものは、ひとつのマジックである。それぞれに個性的で技術のあるミュージシャンが集まっても、必ずしも素晴らしいバンドになるとは限らない。また技術的にも経験も未熟なメンバーが集まったとしても、ひとつのバンドとしてまとまったときに途方もないエネルギーを出すことがある。これがロックバンドの面白さであり、最大の魅力である。

このディスカウントの場合はどうか。ファーストアルバムの荒々しさは、テクニックよりもやりたいことが先にある傍若無人なギターと、「へたうま」と言いたいくらい幼い女性ボーカル、そして「リズムを保つ」という言葉を知らないかのように早くなったり遅くなったりするどたばたドラムが大きな魅力であった。このアルバムではベースがJames ParkerからTodd Rockhillへと変わったが、他のメンバーはファーストアルバムから同じである。確かに上手くなった。しかしバンドとしての輝きは、ファーストアルバムでみせてくれたほどの眩しさを感じない。

このアルバムが悪いと言っている訳ではない。演奏は堂々としており、まさに順風満帆の貫録である。曲もバラエティに富み、それぞれに個性的でスピード感も失われていない。特にボーカルのAlison Mosshartの成長が著しい。素人くささがなくなり、ロックシンガーの歌い方になっている。それでいてキュートな魅力はちゃんと持っている。ある意味でこのアルバムは、落ち着いてじっくりと味わうことができるものである。

残念ながらこのサードアルバムを残して解散してしまうディスカウントだが、俺たちには記録された3枚のアルバムを、気の済むまで聴く幸せが残されている。このアルバムは1999年の7月にInner Ear Studiosで録音された。(20070508/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)

Half Fiction / DISCOUNT

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このバンドを「パンク」と呼ぶことが正確かどうか自信がないが、あえて分類するとなると、やはり「パンク・ロック」なのだろう。このアルバムはディスカウントのセカンドアルバムである。メンバーはファーストアルバム「Ataxia's Alright Tonight」と同じ。ベースがJames Parker、ボーカルがAlison Mosshart、ドラムがBill Nesper、ギターがRyan Seagristだ。

ファーストアルバムに比べて明らかに音が洗練されている。はっきりと違うのはギターの音だ。ファーストアルバムでは比較的ナチュラルなディストーション・サウンドであったものが、このアルバムでは強くソリッドに歪ませた音になっている。これは好みが分かれるところだろう。ファーストアルバムの若々しい突っかかるような音が好きだ、という人も多いに違いない。

もうひとつの違いは、ファーストアルバムで荒々しく暴れまわっていたドラムと、ごりごりと弾きまくっていたベースがおとなしくまとまっていることである。ディスカウントの魅力はキュートなボーカルと曲の主導権を握るギターにあるのは間違いないが、ファーストアルバムでみせたドラムとベースの荒々しいリズムも魅力があった。だからこそバンドが一体となって演奏しているという感動があったのだが、このセカンドアルバムでは、リズムを押さえることを意識し、あえて派手なプレイを避けているように思える。

その意味ではやや物足りないところも感じるが、リズムがシンプルなだけに疾走感があり、ボーカルとギターの魅力を前面に押し出したアルバム、というかんじだ。なお付け加えると、6曲目「Pocket Bomb」、7曲目「Keith」、9曲目「Stale Laughter Fake Smile Soup」などでは暴れまわるドラムもみせてくれる。

録音は1997年の6月。Morrisound StudiosでSteve Heritageによって行われた。Additional EngineeringとしてMitchell Howellの名前がある。またアートワーク、ペインティング、ドローイング、タイピング、レイアウトのすべてをアリソンが行った、とある。このアルバムは1997年にTank Musicから発売された。(20070507/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)

Barbeque Dog / RONALD SHANNON JACKSON AND THE DECORDING SOCIETY

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ロナルド・シャノン・ジャクソンはオーネット・コールマンのプライム・タイムでドラムを叩き、ジャズの歴史上重要なアルバム「ダンシング・イン・ユア・ヘッド」と「ボディ・メタ」に参加した。またジェイムズ・ブラッド・ウルマーの「アー・ユー・グラッド・トゥ・ビー・イン・アメリカ」やビル・ラズウェルの「ベースライン」にも参加した。またアルバート・アイラーやセシル・テイラーのアルバムに参加したこともある。

リーダー・アルバムとして日本で有名なものは「マン・ダンス」であるが、これはロナルド・シャノン・ジャクソン名義のアルバムとしては4作目である。この「バーベキュー・ドッグ」は続く5作目のアルバムにあたる。その大胆さ、斬新さ、エネルギッシュな演奏などあらゆる点において、俺はこのアルバムを、ロナルド・シャノン・ジャクソンの初期のベストアルバムだと確信している。

タイトル曲「バーベキュー・ドッグ」をはじめ素晴らしい曲が並ぶが、中でも俺のお気に入りは、とぼけたスピード感がある「ユーゴ・ボーイ」、そして独特の浮遊感をもつ「ホエン・チェリー・ツリーズ・ブルーム・イン・ウインター、ユー・キャン・スメル・ラスト・サマー」である。これ以外の曲も、リフが実に印象的で魅力がある。リフにからむインタープレイも素晴らしく、バンドとして有機的にうまく機能しており、各ミュージシャンの個性が存分に発揮されている。

ロナルド・シャノン・ジャクソンはアメリカ、テキサス州フォートワースで1940年に生まれた。数多くの革新的なアルバムに参加し、自らのバンド「デコーディング・ソサエティー」を結成したのは1979年である。セッションアルバムにおけるドラムプレイも見逃せないが、やはりリーダーアルバムが最ものびのびと叩いている気がする。日本ではアルバムが手に入れにくく、このCDも何年も探し続けて苦労して手に入れたのだが、できる限り追い続けたいミュージシャンのひとりだ。

このアルバムは1983年に発表された。1983年の3月にイギリス、ロンドンのジャム・レコーディングというスタジオで録音され、4月にアメリカ、ニューヨークのエレクトリック・レディ・スタジオで編集されたとある。デコーディング・ソサエティのメンバーとして、ドラムがロナルド・シャノン・ジャクソン、ギターがヴァーノン・リード、ベースがメルヴィン・ギブス、ソプラノとアルトサックスとしてゼイン・マッセイ、フレットレス・エレクトリック・ベースとしてリバーンド・ブルース・ジョンソン、トランペットとしてヘンリー・スコットの名前がクレジットされている。(20070502/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)

The Frank Cunimondo Trio Introducing Lynn Marino / THE FRANK CUNIMONDO TRIO

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フランク・カニモンドとリン・マリノのことを知ったのは、あるジャズのコンピレーションCDからだった。このコンピレーションCDを手に入れたのも偶然で、たまたま放出セールをやっていたWebのCDショップで、気まぐれに100円の値段がついたものを何枚か購入した中にあった。そのCDには、独特のハスキーな女性ボーカルの軽快な曲、一度聴いたらもう忘れることはできない魅力的な曲があった。それが「フィーリン・グッド」だった。

このコンピレーションCDで聴くまではフランク・カニモンドという名前を知らなかったが、有名なジャズ・ピアニストらしい。アメリカ、ペンシルバニア州のピッツバーグで生まれ、6歳の頃からクラシックピアノを習い始め、後にジャズピアノを弾くようになる。すでに10代前半で、ピッツバーグ周辺のクラブでジャズピアノを弾くようになる。19歳のときには、アトランティックシティーやマイアミなど多くの都市をツアーした。ピッツバーグでは有名なクロフォード・グリルというクラブでよく演奏した。また若きジョージ・ベンソンともステージをよく共にしたという。

またフランク・カニモンドはジャズピアノの教師としてのキャリアもある。デュケーヌ大学やピッツバーグ大学、カーネギー・メロン大学で教えたそうだ。また1980年代には「Cunimondo's Keyboard Jazz Supper Club」というクラブをピッツバーグでもっていた。1989年にはピッツバーグで「ベスト・ジャズピアニスト」に選ばれた。

一方で魅惑的なボーカルを聴かせてくれるリン・マリノについては詳しいことがわからない。物憂げに、気だるく、甘えたような幼い声は他にたとえようのない魅力がある。このCDにある簡単な解説によると、この録音の当時リン・マリノは19歳であったそうだ。CDの帯には「ピッツバーグが生んだ『もうひとりのブロッサム・ディアリー』の知られざる名唱が、いま蘇る」とある。だがブロッサム・ディアリーほどの素人くささはない。

俺が夢中になった「フィーリン・グッド」はもちろん、他にも素晴らしい曲がたくさんある。「フィーリン・グッド」はフランク・カニモンドのオリジナルではなく「Bricusse / Newley」のクレジットがある。このCDでは一曲目の「ラブ・ソー・ファイン」だけがフランク・カニモンドのオリジナルだ。この曲もいい。

このCDは2000年にサウンドヒルズレコードから発売された日本盤だ。録音は1960年代末、ピッツバーグ、とだけ、ある。(20070501/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)

Malice in Wonderland / PAICE ASHTON LORD

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ディープ・パープルのドラマーであったイアン・ペイスとキーボーディストのジョン・ロード、そしてキーボーディストでありボーカリストのトニー・アシュトンによって、このアルバムは作られた。3人の名前をとって付けられたグループ名は、日本人ならば「鈴木、佐藤、山田」といった感じか。日本人ならばとてもロックバンドのグループ名には思えず、お笑いタレントのトリオみたいだ。

ディープ・パープルは他にない新しいロックを創造するという開拓者精神に満ちたバンドであったが、ここで聴かれる音楽は、ブルースやファンクの要素をふまえたもので、どちらかといえば落ち着いて聴けるものだ。ディープ・パープルのような華麗でスリリングな音楽を想像すると期待はずれかもしれない。

ボーカルをとるトニー・アシュトンはジョン・ロードの旧友であるらしい。渋い声の、いかにもブルース的なボーカリストである。トニー・アシュトンはキーボード奏者でもあるので、ペイス・アシュトン・ロードではドラム+キーボード×2という編成になる。これに加わったギタリストはバーニー・マースデンで、後にホワイトスネイクに加入することになる。なかなか味のあるギタリストだ。またベースとして加わったのはポール・マルチネスで、オーディションで選ばれたそうだ。

イアン・ペイスのドラムはリラックスしたものだし、ジョン・ロードのハモンド・オルガンも「弾きまくる」という感じではない。あえてディープ・パープルのイメージを避けた曲作りをしている。ある意味で地味なアルバムだが、だから逆にいつまでも飽きずに楽しめるものでもある。このアルバムはもともと1977年に発表された。このCDはポリドール株式会社から1990年に発売されたもので、日本語の解説も付いており、日本語訳はないが英語の歌詞も書かれている。(20070427/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)

ありがとう / りんけんバンド

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りんけんバンドのライブを見たのはいつだっただろう。俺がりんけんバンドを知ったのは、レコードやCDなどのアルバムではなく、FMラジオやテレビの番組ではなく、中規模のライブハウスでのステージを見てだった。強烈な印象だった。またそのライブでは観客も熱狂し、何度も何度もアンコールの手拍子と足踏みを止めない。りんけんバンドもそれに応えて何度も楽屋へ引っ込んでは出てきて演奏する、ということを繰り返した。あれほどバンドと観客が一体となったコンサートは、なかなかない。りんけんバンドのメンバーも、何度もアンコールに応えて汗だくになりながら、とても充実感に満ちた顔をしていた。素晴らしいコンサートだった。

このアルバム「ありがとう」を聴いたのは、ライブハウスでのステージを見てしばらく経ってからだった。ライブハウスのダイナミックな演奏の洗礼にさらされた俺にとって、このアルバムを聴いたとき、正直に言って「拍子抜け」した感じだった。りんけんバンドの大きな魅力として、力強い野性的なリズムがある。しかしこのアルバムでは、リズムセクションを機械に頼っている。何よりも1曲目「ありがとう」の冒頭、明らかに打ち込みまるだしのジャストタイミングなシンセサイザーとドラムマシンの音は興ざめである。ライブハウスでの汗の飛び散る演奏と比べて、なんとクールなことだろう。

このアルバムはりんけんバンドにとってファーストアルバムになるが、バンドの曲をいかにも「記録した」という感じがする。もちろん「レコード」という言葉は「記録する」という意味があるのだが、このアルバムはひとつの作品というよりも、記録として保存するために作った、というように思えてしまう。もちろんタイトル曲「ありがとう」を含め、素晴らしい曲が収められているのだが、アルバムとしての完成度は残念ながら物足りない。

それにしても沖縄の言葉というものは、なぜか懐かしい響きがある。俺の母親は東北地方の生まれで、俺のルーツのひとつは東北地方にあるはずだが、東北の言葉には懐かしさをあまり感じない。しかし沖縄の言葉には不思議なくらい懐かしく感じられる。これは何故だろう。(20070426/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)

The Best of Sweet / SWEET

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スイートというバンドの知名度はそう高くはないかも知れないが、彼らのヒット曲は多くのロックファンに影響を与えたはずだ。「フォックス・オン・ザ・ラン」や「ブロックバスター」、「ヘル・レイザー」、そしてロック史上に残る名曲「アクション」。また「ロックン・ロールに恋狂い」という邦題の曲もあった。原題は「ボールルーム・ブリッツ」で直訳すると「ダンスホールの電撃」である。意訳もはなはだしいが、当時はこのような無理な邦題を付けるということも多かった。

スイートはもともと1965年、イギリスのソウルバンドであった「ウェインライツ・ジェントルメン」にさかのぼる。このバンドには後にスイートのドラマーとなるミック・タッカーとともに、ボーカリストとしてイアン・ギランがいた。彼らは小さなクラブでロック・アンド・ブルースとサイケデリックをミックスしたような曲をやっていたらしい。そして1965年にはイアン・ギランが「エピソード・シックス」に加入するために脱退し、代わりにブライアン・コノリーがボーカリストとして加入した。その後「ジ・アーミー」というバンドにいたスティーブ・プリーストが加わり、さらにゴードン・フェアマイナーというギタリストが加わって、「スイートショップ」というバンド名で1968年から活動を始めた。その後ギタリストがゴードン・フェアマイナーからフランク・トーピーに代わり、1968年に「スロー・モーション」というシングルを発表するが、このとき、同名の「スイートショップ」という名前のバンドが既にあったために、バンド名を「スイート」と変更した。アンディ・スコットが参加するのはもう少し後、1970年のことである。

スイートの曲は学生時代に良く聴いた。学生時代にはアルバムを買うお金も少なく、スイートは友達からレコードを借りて聴き、アルバムを買うことはなかったが、シングルレコードは何枚か買った。そのシングルレコードの中で、B面に「メデューサ」という曲があった。この曲は、このCDの解説の東ひさゆき氏によると、アメリカや日本で発売されたシングル「アクション」のB面の曲であり、もともとは「Are You Coming to See Me」というタイトルであったらしい。それをレコード化する際に歌詞やアレンジを手直しして「メデューサ」とした、と書かれている。この曲はアルバムには未収録であり、またスイートのどのベスト盤にも収録されていない。俺が知っている限りでは、唯一この日本盤CD「Burrn!presents」にのみ収録されている。その意味で、このCDは貴重である。

スイートの活動は以外に長く、「スイート」の名前で1991年まで活動したようだ。またそれ以降も「アンディ・スコッツ・スイート」という名前で現在も活動しているらしい。しかし彼らの全盛期は1976年のアルバム「ギブ・アス・ア・ウインク」である。以後は音楽シーンの変化に戸惑いながら迷走したと言っても過言ではないだろう。このベストCDからも、彼らの絶頂期のエネルギーと、それ以降のものが違うことがよくわかる。(20070425/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)

Ataxia's Alright Tonight / DISCOUNT

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この素晴らしい音楽との出会いも偶然だった。たまたま通勤帰りに駅の近くの中古CD店にふらりと立ち寄ったとき、いくつかのCDを棚から取り出しながら眺めていて、このCDを手にした。ジャケットに惹かれた。いったいどんな音楽なのか全く予想がつかないまま、しかし何か感じるところがあり、このCDを手にとってレジへ向かった。そのとき、カバンの中にはCDプレイヤーもあったので、俺はこのCDを家へと向かう道でプレイヤーに放り込み、歩きながらヘッドフォンを耳に当てた。そしてプレイヤーの再生ボタンを押した。

流れてきたのは素晴らしく威勢のいいロックだった。「俺たちの音楽は正しい」と言い張るもの。まさにロックの真髄がここにあった。リズムをキープする、という言葉を忘れたかのように、曲の中でリフが変わるたびにめまぐるしく早さも変わる。前のめりのリズムにバンド全体が一体となって突っかかる。俺は常々「ファーストアルバムにバンドのスピリットが凝縮されている」と思っているのだが、まさにこのアルバムにはディスカウントというバンドの魅力が詰まっている。おそらくどの曲も、小さなクラブで繰り返し演奏され、充分に熟成されたものだろう。

分析的に聴いてみると、このアルバムには「セックス・ピストルズ」との類似性を感じる。ディスカウントというバンドは1995年にアメリカのフロリダ州で結成されたが、アメリカン・ロックではなく、ブリット・ポップの継承者なのだと断言する。録音の状態もいい。ギターやドラム、ベースが演奏する姿が目に浮かぶような録音だ。

このアルバムにおけるディスカウントのメンバーは、ベースがJames Parker、ボーカルがAlison Mosshart、ドラムとボーカルがBill Nesper、ギターとボーカルがRyan Seagristだ。ディスカウントはこの後同じメンバーでセカンドアルバム「ハーフ・フリクション」を1997年に発表した後、ベースをTodd Rockhillに交代してサードアルバム「クラッシュ・ダイアグノスティック」を2000年に発表。同2000年には解散する。(20070424/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)

Second Edition / PUBLIC IMAGE LTD

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華麗なテクニックがある訳ではない。暴力的な攻撃性が感じられる訳でもない。しかしパブリック・イメージ・リミティッドの音楽には、他の何物にも代えられない魅力がある。おそらくその理由のひとつは、ジョン・ライドンのボーカルにあるのだろう。もうひとつの理由は、ジャー・ウォーブルのベースだろう。

このもたついたリズム感はなんだろう。この単純すぎるほどの構成はなんだろう。もしかしたら自意識過剰な学生バンドの練習風景を録音したかとも思われても仕方がないかもしれない。しかしここには得体の知れない魅力がある。リズム感とか演奏技術とか曲の構成とか、そのようなあらゆる音楽技法を超越したところの魅力だ。しかしもちろん実際は周到に計算しつくされた音楽であるのだが、その計算されたところを感じさせないところが凄いのだ。

このアルバムはもともとパブリック・イメージ・リミティッドのセカンドアルバムで、45回転の12インチLP3枚を金属ケースに入れて発売され「Metal Box」と呼ばれたものだった。12インチつまり直径30cmのLPレコードと同じでありながら回転数をLPの33回転ではなく45回転にしたのは、その方が単位時間あたりの記録溝が長くとれるからで、音の再現性が良くなることが期待でき、とりわけ高音の再現性は改善されるだろう。この「Metal Box」を33回転のLPにして2枚組で発売されたものがこの「セカンド・エディション」である。

BGM的に聞き流したのではこのアルバムの凄さは伝わらないだろう。2007年という今になって聴いても、新鮮さを失っていないことに驚く。このアルバムが当初「Metal Box」として発売されたのは1979年。「セカンド・エディション」として発売されたのは1980年であったようだ。このCDには「1979年」のクレジットがある。ワーナーブラザーズから発売された米盤のCDだ。(20070423/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)

The Rotters' Club / HATFIELD AND THE NORTH

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ハットフィールド・アンド・ザ・ノースというグループのことを知ったのは学生時代に読んだプログレッシブ・ロック関係の雑誌からで、そこではこのアルバム「ロッターズ・クラブ」が絶賛されていたのを覚えている。しかし当時はレコードの時代で、輸入盤も今のように入手しやすい環境ではなかった。いつかは聴きたいものだと思いながら時が過ぎ、その間にファーストアルバム「ハットフィールド・アンド・ザ・ノース」を聴くことができた。当時ビクター音楽産業株式会社がVirginレーベルのプログレッシブ・ロックを日本で紹介する先駆的な企画を行っており、このアルバムは日本盤として発売されていたからだ。少し話はそれるが、このシリーズには「ヘンリー・カウ」や「スラップ・ハッピー」をはじめ、日本では噂しか入らなかったグループの偉大なアルバムが並んでいた。このシリーズが一部の日本のロックファンに与えた影響は極めて大きかったといえる。

そして結局俺がこの「ロッターズ・クラブ」を聴いたのは、ロック・シーンがパンクやニュー・ウェイブに覆われてしまった頃だった。どちらかといえば破壊的なエネルギーに満ちあふれたロックに興味の中心があった俺には、この「ロッターズ・クラブ」は物足りないものに思えた。逆説的ではあるが、その大きな理由として、アルバム一曲目の「シェアー・イット」の秀逸さにある。イントロなしに一拍目から突然始まる曲は「ロッターズ・クラブ」すなわち「ろくでなしクラブ」のことを歌う、ジャズ的な要素とポップさをあわせもった素晴らしい曲だ。そして印象的なシンセサイザーによるキーボードソロ。この約41秒のソロを俺は何回繰り返して聴いただろう。

だが2曲目以降はどちらかといえばジャズの影響の濃い曲ばかりだ。そして6曲目「フィッター・ストーク・ハズ・ア・バス」や7曲目「ディドゥント・マター・エニーウェイ」、9曲目「マンプス」の気だるいボーカル。この落差が若かりし当時の俺にはピンと来なかった。そこで俺はこのアルバムを、1曲目の「シェアー・イット」ばかり繰り返し聴くということになった。もちろん、もう少し年齢を重ね、ジャズの面白さがわかるようになり、他の「カンタベリー派」と呼ばれる音楽を聴くようになってからは、このアルバムを聴く俺の姿勢も変わっていった。

しかし名曲「シェアー・イット」に続く2曲目「ラウンギング・ゼア・トライング」の冒頭をリードするフィル・ミラーのギターは、フレージングの豊かさは素晴らしいものの、いくつものミスピッキングがある。そしてまたこの部分はギターの音がクリアなことと伴奏が薄いことで、ミスがたいへんよく目立つ。まさかこの録音がワンテイクで録られたものではないと思うが、ギターのパートだけでもやり直そうとは思わなかったのだろうか。それとも数ある録音テイクのうち、これが一番よかったのだろうか。または録り直す時間がなかったのだろうか。気になるところだ。

改めて聴き直すと、キング・クリムゾンの手法を真似たところがあることに気付く。たとえば4曲目の「カオス・アット・ザ・グリージー・スプーン」でのワウを効かせたベースは後期クリムゾンのジャン・ウェットンがやっていたし、5曲目「ザ・イエス・ノー・インターリュード」でのギターソロはロバート・フリップに似た手法である。それにもかかわらずクリムゾンのような攻撃性を感じさせないのは、ピップ・パイルのジャズ的なドラムにあるのだろう。

このアルバムに関して、ひとつ気になるところは、6曲目「フィッター・ストーク・ハズ・ア・バス」の中盤から入る男声スキャットである。これがロバート・ワイアットの声に良く似ているのだ。CDのライナーにはロバート・ワイアットの名前はない。しかし前作「ハットフィールド・アンド・ザ・ノース」には参加していたので、もしかしたらノー・クレジットで参加していたのかも知れない。ただしここでのスキャットは明瞭ではないので、聴いただけの印象でロバート・ワイアットだと断言することは俺にはできない。

「ザ・ロッターズ・クラブ」というこの素晴らしいアルバムを作り上げたハットフィールド・アンド・ザ・ノースのメンバーは、ギターがフィル・ミラー(Phil Miller)、ドラムスとパーカッションがピップ・パイル(Pip Pyle)、ベースとボーカルがリチャード・シンクレア(Richard Sinclair)、オルガンとエレクトリックピアノそしてトーン・ジェネレイターズがデイブ・ステュワート(Dave Stewart)である。ゲストとして、フルートとソプラノサックスおよびテナーサックスでジミー・ヘイスティングス(Jimmy Hastings)、フレンチ・ホルンでモント・キャンペル(Mont Campell)、オーボエとバスーンでリンゼイ・クーパー(Lindsay Cooper)、クラリネットでティム・ホグキンソン(Tim Hodgkinson)、そして「and the very wonderful Northettes」としてバーバラ・ガスキン(Barbara Gaskin)、アマンダ・パーソンズ(Amanda Parsons)、アン・ローゼンタル(Ann Rosenthal)の名前がある。当時のバンド間の親交の深さがあらわれている。

このアルバムは1975年にレコードで発表され、このCDはCaroline Record Inc.から発売された。オリジナルアルバムのトラックに加えて、「(ビッグ)ジョン・ウェイン・ソックス・サイコロジー・オン・ザ・ロウ」と「カオス・アット・ザ・グリージー・スプーン」の別テイク、「Halfway Between Heaven and Earth」、「Oh, Len's Nature!」、「Lying and Gracing」の5トラックがボーナストラックとして加えられている。「Halfway Between Heaven and Earth」はクールなスピード感のある曲で、ブランドXかソフト・マシーンなどがやりそうな雰囲気がある。「Oh, Len's Nature!」はカンタベリー派らしくないヘビーな曲。後期クリムゾンを彷彿させる。「Lying and Gracing」はソロプレイを主体にしたインストゥルメンタル曲で、これもブランドX的。ライブ録音のようだ。レコードを持っているアルバムはできるだけCDを買わないようにしているのだが、これはボーナストラック聴きたさに買ってしまった。(20070420/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)

More Live Nektar in New York / NEKTAR

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ネクターというバンドは、もっと注目されても良いのにと思う。このアルバムや「ライブ・イン・ニュー・ヨーク」を聴いても、高い演奏力を持っており、充実したステージをしてくれるようだし、何よりもスタジオアルバムのトータル性、完成度の高さがすごい。このライブでも、俺の大好きなアルバム「ダウン・トゥ・アース」から「Astral Man」や「Show Me the Way」そして「That's Life」のエキサイティングな演奏を聴かせてくれる。

そして聴きどころは「Remember the Future」のパート1とパート2である。パート1が14分06秒、パート2が8分19秒。ドラマ性の高い複雑な構成の壮大な曲を、合計22分25秒。息をつかせず演奏する。この2つのトラックを聴くだけでも、このライブ録音の価値がある。「ダウン・トゥ・アース」も「リサイクルド」も素晴らしいが、やはり「リメンバー・ザ・フューチャー」はネクターの代表曲だ。

ただ一点、ネクターに物足りないところがあるとすると、それはスター・ソロイストの不在である。たとえばギタリスト、あるいはボーカリストには、カリスマ性の感じられないところがある。逆にいえば、ドラムやベースのリズムセクションと、スタンドプレイではなくバンド全体のまとまりに魅力があるのであるが、やはりロック・バンドには花形プレイヤーがあったほうがいい。

他には「Fidgety Queenn」と「King of Twillight」、そしてアルバム「リサイクルド」からの「Marvelous Moses」「It's All Over Now」が演奏されている。全9曲、67分33秒。ネクターの世界を味わいつくせる。そしてやはりここは、「ライブ・イン・ニュー・ヨーク」とあわせてセットで聴くのが正しい姿勢であろう。

「ライブ・イン・ニュー・ヨーク」同様スリーブは解説らしきものはなく、曲名を書いただけの簡素なものだ。もともとレコードは1978年に発売されたもののようだ。このCDはBELLVER musicから1991年に発売されたものだ。ドイツ盤である。

Live in New York / NEKTAR

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日常会話の中で「ネクターが好き」といえば、間違いなく不二家の清涼飲料水のことを指すだろう。しかしどうやら「ネクター」という商品は、不二家の専売特許ではないらしい。おまけに「不二家ネクター」も製造か販売をサッポロ飲料がしているということなので、話は簡単ではない。しかしもちろんこの「カルト・ミュージック・コレクション」で「ネクター」といったときは、飲料ではなくロックバンドの名前を意味している。

「ネクター」というバンドを好きで聴いている人はどれくらいいるのだろうか。俺が「ネクター」というバンドのことを知ったのは、学生時代のロック雑誌の付録であった、プログレッシブ・ロック特集の小冊子によってである。その雑誌にはアルバム「リメンバー・ザ・フューチャー」のことが紹介されていたが、当時日本盤では発売されたいなかったはずだし、輸入盤を取り扱う店でも見当たらず、どうにかして聴きたくて悶々としていた記憶がある。しばらくレコード店を探し歩いて、アルバム「ダウン・トゥ・アース」を見つけた。これが俺の「ネクター」初体験である。

そして名盤といえる完成度の高いアルバム「リサイクルド」を聴くことができたし、期待していた「リメンバー・ザ・フューチャー」にも出会うことができた。「リメンバー・ザ・フューチャー」はもちろん良いアルバムだったが、それよりも「リサイクルド」や「ダウン・トゥ・アース」の完成度に強く感動を受けた。そしてこの「ライブ・イン・ニュー・ヨーク」も聴くことができた。

だがネクターの音楽はプログレッシブ・ロックというには多少無理がある。プログレッシブな部分も持っているのだが、ネクターの音楽を貫いているのは、ただ良質のエンターテインメントなロックだ、ということである。目を三角にして聴くような難解さはない。しかし安易なポップスではない。たいへんに味わい深いロックだ。

このライブに収録されているのは「It's All Over Now」「Good Day」「A Day in The Life of a Preacher」「Desolation Valley」「That's Life」「Show Me the Way」「King of Twilight」「Woman」「Good Ol' Rock'n Roll」の9曲だ。もともとアナログレコードでは2枚になっていた。「It's All Over Now」はアルバム「リサイクルド」から、「That's Life」と「Show Me the Way」はアルバム「ダウン・トゥ・アース」からの曲である。

スリーブは解説らしきものはなく、曲名を書いただけの簡素なものだ。もともとレコードは1977年に発売されたが、このCDはBELLVER musicから1991年に発売されたものだ。(20070405/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)

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Author:yoc
1998年から「カルト・ミュージック・コレクション」というWebサイトを始めた。これを2006年12月からblogの形で再開することにした。音楽を心から愛する者のために、俺は書く!

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