Wandlungen Chamber Music / Caspar Rene Hirschfeld

caspar_rene_hirschfeld_chamber_music_small.png

カスパール・ルネ・ヒルシュフェルトの音楽は、昨日紹介した「Solitudes」と、このアルバムの2枚を聴いた。いずれもCol legnoから発売されているもので、「Solitudes」も面白かったが、こちらのアルバムはもっと楽しめた。

1曲目のピアノとパーカッションのための「ソネット第5番」はまるでハーモロディクスだ。いきなり始まるドラムとピアノの音の洪水に明らかである。一般的なドラムキットとピアノのデュオなのだが、ドラムがリズムでピアノがメロディー、というわけではない。ドラムとピアノの両方が、リズムとメロディー、ハーモニーの渾然一体となった演奏を試みている。そして曲の中間部ではドラムキットは下がり、どんな楽器なのか判然としないパーカッションが現れる。楽器の姿が見えないからこそ、想像力をかきたてられて面白みが倍増する。そしてピアノもリズムを意識した演奏となり、パーカッションとピアノがリズムの面白さを競うのである。曲の最後は力強いリズムで締めくくる。潔い。

2曲目はアルバムタイトルにもなっている、オーボエ、チェロ、ハープのための「さすらい第3番」である。原題は「Wandlungen」であり、この言葉は単に「変化」という意味も持っているので、もしかしたら「さすらい」と訳すのは考えすぎなのかも知れない。この曲は最初と最後に同じテーマが用いられ、それに挟まれて3つのモチーフが試みられる。まず最初にあらわれるのは、けつまづきそうな危うさを感じるもので、さしずめ「夢遊病のバンドルンゲン」である。次に現れるのは、静かに落ち着いた様子の、いわば「思索するバンドルンゲン」だ。そして3つめは、軽やかな雰囲気の「舞い踊るバンドルンゲン」といったところか。

3曲目のクラリネット、ビオラ、チェロ、ピアノのための「ソネット第11番」は、ピアノとバイオリンがリズムを先導する。そして後半部では何かの物を叩く音が使われるのだが、この音がとても良い響きなのだ。かなり激しい音がして、もしこれが楽器を叩く音だとすれば、楽器が大丈夫なのかと心配になるほどだ。この曲に限らないのだが、カスパール・ルネ・ヒルシュフェルトはリズムや打楽器の音にこだわる作曲家なのに違いない。

そしてこのCD最大の聴きどころは、4曲目の「夏の夜のバリエーション」である。曲の冒頭からジャングル・ドラム風の無造作な打楽器があらわれ、そして拍子抜けするような美しい、そしてなぜか懐かしいハープのメロディーが重なるところが意外である。このハープは、訥々としたものであり、調性がとれているようで、千路に乱れるような危うさがある。ああ、このメロディー。なんて美しいのだろう。一度耳にするだけで、永遠に心に残るメロディーだ。

そして、また、自己完結的なドラムが無造作に割り込んでくる。今度は分裂的なドラミングだ。そしていくつかのバリエーションが紡ぎつづられ、最後はまたジャングルドラムからハープの調べにもどっていく。美しい冒頭のメロディーが再びあらわれる。そしてここでは、もはやドラムは粗暴ではない。完全にハープの僕となり、ともにひとつの音楽を形作っている。もはやここには意外さはなく、完全なコンビネーションをとって完結する。まるで、音によるひとつのドラマを、「夏の夜」という言葉に集まった音たちによるドラマを見たようだ。

どうだ。聴きたくなってきただろう。はっきり言ってこのCDは「夏の夜のバリエーション」を聴くだけでも価値がある。ぜひ、ちゃんとしたオーディオセットで、ゆったりと深いソファーに座りながら、心ゆくまで聴きたいものだ。

このCDは、現代音楽を専門とするレーベルCol legno(コル・レーニョ)から2003年に発売された。(20070117/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)
スポンサーサイト



COMMENT

Name
E-mail
URL
Comment
Pass  *
Secret? (管理者にだけ表示)

プロフィール

yoc

Author:yoc
1998年から「カルト・ミュージック・コレクション」というWebサイトを始めた。これを2006年12月からblogの形で再開することにした。音楽を心から愛する者のために、俺は書く!

最近のトラックバック

ブロとも申請フォーム

ブログ内検索