Symphony No.3 悲歌のシンフォニー / Henryk Gorecki

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欧米で30万枚を超える大ヒットとなったグレツキの代表作が、この「悲歌のシンフォニー」は単なる癒しの音楽ではない。届かなかった神への祈りに対する悲嘆と哀悼の歌である。

不安を象徴する地の底でうごめくような低音から第1楽章「レント~ソステヌート・トランキッロ・マ・カンタービレ」は始まる。そして少しずつ、まるで水面にさざ波が立つかのように旋律がわきあがってくる。次第に希望が形をあらわすかのように旋律の輪郭が明らかになり、力強く、そして優しくひとつになり、ユニゾンで奏でられる。

長い前奏の後に「聖十字架修道院の哀歌」として知られる「ウィソグラの歌」より15世紀ポーランドの祈りの言葉が歌われる。「私の愛しい、選ばれた息子よ、自分の傷を母と分かち合いたまえ・・・」息子を思う母の心に、優しい気持ちになれるのは束の間である。一転して不安を呼び起こす瞬間が訪れ、叫ぶように悲しみを振り絞る歌となる。そして再び旋律は散り散りになり、地の底へと沈み込んでいく。この第1楽章は本当に見事である。演奏時間も26分23秒と全体のほぼ半分を占めており、まさにこの曲の中心となる楽章である。

第2楽章「レント・エ・ラルゴ~トランキリッシモ」はこのシンフォニーの中でも最も有名になった楽章である。第1楽章の重々しさから、一転して明るいテーマが奏でられるが、それは束の間。「お母さま、どうか泣かないでください・・・」と始まる歌は、第2次世界大戦にナチス・ドイツに囚われた女性が独房の壁に書いたと言われる祈りの言葉である。悲痛な歌は曲の中間部で再び明るいテーマに彩られて一転するが、悟ったかのような神聖な印象の奥には、不安と恐怖が渦巻いている。

この第2楽章がイギリスのあるラジオ番組のテーマ曲としてとりあげられたことが、グレツキの再評価につながったらしいが、それは、ある意味で勘違いの結果である。この第2楽章は、囚われの身となり死を覚悟した女性がもつ不安と恐怖、神への祈り、そして母親への心遣いという様々な思いを一つの楽章へ集成したものであり、癒しを感じさせるのは、その単なる一面でしかない。

第3楽章「レント・カンタービレ・センプリーチェ」では、カトヴィーツェの北西にあるオポーレ地方の民謡が使われる。息子を亡くした母親の嘆きである。ミニマル的に短く繰り返されるフレーズには、母親の無念の思いが込められている。

録音は1991年5月、ロンドン、CTSスタジオで、ソプラノはドーン・アップショウ、ディヴィッド・ジンマン指揮、ロンドン・シンフォニエッタの演奏で行われた。このCDはワーナー・ミュージック・ジャパンから発売された日本盤だ。(20070210/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)
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1998年から「カルト・ミュージック・コレクション」というWebサイトを始めた。これを2006年12月からblogの形で再開することにした。音楽を心から愛する者のために、俺は書く!

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