Cherkazoo and Other Stories... / Ian Gillan

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若い頃の俺なら、このアルバムを聴いて憤ったかもしれない。ここにある音楽の多くは、ディープ・パープルやイアン・ギラン・バンドの音楽とは全く違うものだ。「ハードロック」に分類するのも間違っているだろう。作品の完成度も高くない。というよりも、きちんとした作品に仕上げられる前のスケッチのようなものだ。しかし、これもイアン・ギランの音楽のひとつであることは間違いない。

まずアルバムの冒頭にあるタイトル曲の「Intro」で、曲を始める前のリラックスした会話が聞こえてくる。このトラックがアルバム全体を象徴している。そしてタイトル曲の「Cherkazoo」はとてもわかりやすい曲だ。なんとなく聴いているだけで、いつのまにか歌詞やメロディーを覚えてしまった。続く「Monster in Paradise」は比較的ロック的な曲。曲の最後で延々とリズムを刻むドラムとベースからは、ここに何らかのソロを入れる予定であったのではないかと想像できる。「The Bull of Birantis」はバラードだ。昔のブリティッシュ・ポップ、たとえばドノヴァンのような雰囲気を持っている。懐かしい感じがする。この曲も途中でソロを入れるつもりであったような部分がある。

そしてまた「Intro」と題されたパートが入る。これは続く「Hogwash」なのだが、まずイントロ部分だけを一度やり、次にギランのボーカルを入れるが、途中で止まってしまう。ギランが何か間違ったようで「Sorry」と謝っている。そしてまた曲が始まるが、また止まってしまう。そして続く「Hogwash」に入る。スローなブギである。そして「Driving Me Wild」。これはテイク・ワンで、このCDにはこれ以外に全部で3つのテイクが収められている。「Donkey Ride Dream」はジャージーな曲。ギランのボーカルは、こういう曲も意外に、良い。「Trying to Get to You」と「Ain't That Loving You Baby」は軽快なブギ。そして「Driving Me Wild」の2つめのテイク。これにはファスト・テイクと付けられている。少し早い感じだ。

そして問題の「Music in My Head」だ。申し訳ないが、この曲だけはいただけない。AORといえばいいのか、なまぬるく、山ほど似たような曲があふれているように感じられてしかたない。

次は「You Make Me Feel So Good」がやってくる。かなりテンポは遅めで、ヘビーな感じに仕上げられている。「She Called Me Softly」はカントリー風。そして「Driving Me Wild」のテイク・スリー。これはテンポが遅めだ。「You Led My Heart Astray」はジャズ・ブルース。「A Little Share of Plenty」はリフを活かした曲で、初期のイアン・ギラン・バンドで演奏しても似合いそうだ。「Night & Day」も同様で、初期のイアン・ギラン・バンドを彷彿とさせる。

全体的に、曲のネタ集、レコーディング前のデモテイク、といった感じのアルバムだ。だがこれもイアン・ギランの一面をあらわしたものであることは間違いない。まさにファン向けの一枚だ。6つ折りにたたんだ「イアン・ギラン新聞」といったかんじのものが入っていて、これもファンにとっては嬉しいサービスといえる。(20070313/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)
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1998年から「カルト・ミュージック・コレクション」というWebサイトを始めた。これを2006年12月からblogの形で再開することにした。音楽を心から愛する者のために、俺は書く!

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