The Rotters' Club / HATFIELD AND THE NORTH

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ハットフィールド・アンド・ザ・ノースというグループのことを知ったのは学生時代に読んだプログレッシブ・ロック関係の雑誌からで、そこではこのアルバム「ロッターズ・クラブ」が絶賛されていたのを覚えている。しかし当時はレコードの時代で、輸入盤も今のように入手しやすい環境ではなかった。いつかは聴きたいものだと思いながら時が過ぎ、その間にファーストアルバム「ハットフィールド・アンド・ザ・ノース」を聴くことができた。当時ビクター音楽産業株式会社がVirginレーベルのプログレッシブ・ロックを日本で紹介する先駆的な企画を行っており、このアルバムは日本盤として発売されていたからだ。少し話はそれるが、このシリーズには「ヘンリー・カウ」や「スラップ・ハッピー」をはじめ、日本では噂しか入らなかったグループの偉大なアルバムが並んでいた。このシリーズが一部の日本のロックファンに与えた影響は極めて大きかったといえる。

そして結局俺がこの「ロッターズ・クラブ」を聴いたのは、ロック・シーンがパンクやニュー・ウェイブに覆われてしまった頃だった。どちらかといえば破壊的なエネルギーに満ちあふれたロックに興味の中心があった俺には、この「ロッターズ・クラブ」は物足りないものに思えた。逆説的ではあるが、その大きな理由として、アルバム一曲目の「シェアー・イット」の秀逸さにある。イントロなしに一拍目から突然始まる曲は「ロッターズ・クラブ」すなわち「ろくでなしクラブ」のことを歌う、ジャズ的な要素とポップさをあわせもった素晴らしい曲だ。そして印象的なシンセサイザーによるキーボードソロ。この約41秒のソロを俺は何回繰り返して聴いただろう。

だが2曲目以降はどちらかといえばジャズの影響の濃い曲ばかりだ。そして6曲目「フィッター・ストーク・ハズ・ア・バス」や7曲目「ディドゥント・マター・エニーウェイ」、9曲目「マンプス」の気だるいボーカル。この落差が若かりし当時の俺にはピンと来なかった。そこで俺はこのアルバムを、1曲目の「シェアー・イット」ばかり繰り返し聴くということになった。もちろん、もう少し年齢を重ね、ジャズの面白さがわかるようになり、他の「カンタベリー派」と呼ばれる音楽を聴くようになってからは、このアルバムを聴く俺の姿勢も変わっていった。

しかし名曲「シェアー・イット」に続く2曲目「ラウンギング・ゼア・トライング」の冒頭をリードするフィル・ミラーのギターは、フレージングの豊かさは素晴らしいものの、いくつものミスピッキングがある。そしてまたこの部分はギターの音がクリアなことと伴奏が薄いことで、ミスがたいへんよく目立つ。まさかこの録音がワンテイクで録られたものではないと思うが、ギターのパートだけでもやり直そうとは思わなかったのだろうか。それとも数ある録音テイクのうち、これが一番よかったのだろうか。または録り直す時間がなかったのだろうか。気になるところだ。

改めて聴き直すと、キング・クリムゾンの手法を真似たところがあることに気付く。たとえば4曲目の「カオス・アット・ザ・グリージー・スプーン」でのワウを効かせたベースは後期クリムゾンのジャン・ウェットンがやっていたし、5曲目「ザ・イエス・ノー・インターリュード」でのギターソロはロバート・フリップに似た手法である。それにもかかわらずクリムゾンのような攻撃性を感じさせないのは、ピップ・パイルのジャズ的なドラムにあるのだろう。

このアルバムに関して、ひとつ気になるところは、6曲目「フィッター・ストーク・ハズ・ア・バス」の中盤から入る男声スキャットである。これがロバート・ワイアットの声に良く似ているのだ。CDのライナーにはロバート・ワイアットの名前はない。しかし前作「ハットフィールド・アンド・ザ・ノース」には参加していたので、もしかしたらノー・クレジットで参加していたのかも知れない。ただしここでのスキャットは明瞭ではないので、聴いただけの印象でロバート・ワイアットだと断言することは俺にはできない。

「ザ・ロッターズ・クラブ」というこの素晴らしいアルバムを作り上げたハットフィールド・アンド・ザ・ノースのメンバーは、ギターがフィル・ミラー(Phil Miller)、ドラムスとパーカッションがピップ・パイル(Pip Pyle)、ベースとボーカルがリチャード・シンクレア(Richard Sinclair)、オルガンとエレクトリックピアノそしてトーン・ジェネレイターズがデイブ・ステュワート(Dave Stewart)である。ゲストとして、フルートとソプラノサックスおよびテナーサックスでジミー・ヘイスティングス(Jimmy Hastings)、フレンチ・ホルンでモント・キャンペル(Mont Campell)、オーボエとバスーンでリンゼイ・クーパー(Lindsay Cooper)、クラリネットでティム・ホグキンソン(Tim Hodgkinson)、そして「and the very wonderful Northettes」としてバーバラ・ガスキン(Barbara Gaskin)、アマンダ・パーソンズ(Amanda Parsons)、アン・ローゼンタル(Ann Rosenthal)の名前がある。当時のバンド間の親交の深さがあらわれている。

このアルバムは1975年にレコードで発表され、このCDはCaroline Record Inc.から発売された。オリジナルアルバムのトラックに加えて、「(ビッグ)ジョン・ウェイン・ソックス・サイコロジー・オン・ザ・ロウ」と「カオス・アット・ザ・グリージー・スプーン」の別テイク、「Halfway Between Heaven and Earth」、「Oh, Len's Nature!」、「Lying and Gracing」の5トラックがボーナストラックとして加えられている。「Halfway Between Heaven and Earth」はクールなスピード感のある曲で、ブランドXかソフト・マシーンなどがやりそうな雰囲気がある。「Oh, Len's Nature!」はカンタベリー派らしくないヘビーな曲。後期クリムゾンを彷彿させる。「Lying and Gracing」はソロプレイを主体にしたインストゥルメンタル曲で、これもブランドX的。ライブ録音のようだ。レコードを持っているアルバムはできるだけCDを買わないようにしているのだが、これはボーナストラック聴きたさに買ってしまった。(20070420/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)
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1998年から「カルト・ミュージック・コレクション」というWebサイトを始めた。これを2006年12月からblogの形で再開することにした。音楽を心から愛する者のために、俺は書く!

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